人生100年時代といわれるくらいに伸びている平均寿命ですが、それにともなって新たな問題が生まれているのも事実です。老後の長い期間を1人で暮らさなければならない人にとっては、病気や寂しさなどの心配もあるのが現実問題。
毎日を楽しく過ごすことができる明るい100歳になるには、個人の努力だけでは限界があります。これからの時代には、どういったコミュニティが求められるのでしょうか。
長くなった平均寿命
医学の進歩などにともなって、平均寿命が伸び続けています。1955年には男性が63.60歳で女性が67.75歳だった日本人の平均寿命は、2019年には男性で81.41歳、女性で87.45歳になりました。それとは別にもう一つの寿命があり、2019年には男性が72.68歳で女性が75.38歳になっているものです。
これは健康寿命と呼ばれ、日常生活において介護などを受ける必要がなく、自立した生活を過ごすことができる年齢を表しています。人生100年という時代には、単に平均寿命が100歳というだけではなく、健康寿命も100歳に近づけたいと望むのは、誰にでも共通する願いでしょう。
健康志向が高まる現在では、平均寿命と健康寿命は今後も伸び続けることが大いに期待できますが、個人の意思のみではなくコミュニティレベルでの取り組みも重要になってきそうです。
長い人生ならではの不安
平均寿命が長くなっても、すべての人が一律に長生きできるようになったというわけではありません。不慮の事故や病気などで若くして命を落とす人は、依然として存在します。自分が健康で長生きできたとしても、配偶者が早くに亡くなる可能性は十分にあるのです。
老後の長い期間を一人で過ごさなければならなくなった人は、寂しさや不安との闘いを余儀なくされるかもしれません。個人の努力だけでは、どうすることもできない問題だといえるでしょう。家庭菜園やスポーツなどの趣味を持つことで、不安がまぎれる人もいますが、ペットを飼うことで生きる希望を見いだすことができる人もいます。
昔から家族の一員として飼われることが多かった犬や猫は、それだけ大きなパワーを秘めているといえます。
飼いたくても飼えない動物
動物は好きでも、世話をするだけの力が残っていない人もいます。2000年からスタートした介護保険制度は、介護が必要な高齢者を社会全体で支えることを目的としていて、さまざまなサービスが受けられるのが特徴です。
しかしこの制度のサービスには、ペットの世話は含まれていません。また動物を飼いたいと思っても、1人暮らしであることから躊躇してしまうこともあります。自分が高齢であれば、なおさらその傾向は強くなるでしょう。
動物が好きな人は、動物に癒してもらうことだけを考えたりはしません。自分にもしものことがあった場合に、かわいいペットがどうなるかも常に考えているのです。
殺処分の現状
ペットを飼うか迷う大きな理由の1つに、殺処分の問題があります。日本における2008年の年間の犬猫殺処分数は、犬が82,464頭で猫が193,748頭でした。2018年には、犬が7,687頭で猫が30,757頭まで著しく減少しましたが、依然として高い数値だといえます。
動物好きの人には、耐えがたい事実でしょう。正当な理由によって家庭から引き取られたうえで行われる殺処分もありますが、殺処分される犬猫のうちの8割以上は、元の所有者が分からないためというデータがあります。こうした現実があるため、動物好きの高齢者でも動物を飼うのを諦めるのは、当然の成り行きかもしれません。
引き取られたペットを殺処分せずに済ませる取り組みが目指されていますが、かわいいペットに起こりうる最悪のケースを常に想定するのが飼い主です。
効果絶大のアニマルセラピー
殺処分が問題になっている犬や猫ですが、アニマルセラピーとして人間に対して大きな影響を与えているのも事実です。動物とふれあうだけで癒されるという人は多くいますが、アニマルセラピーの効果はそれだけではありません。
ストレス解消やリラックス効果などの精神的な面での改善はもちろん、感情表現が豊かになって運動量が上がり、病気の回復につながるほどの効果も期待できるのです。実際に認知症やうつ病などにも効果があると言われ、多くの医療機関や福祉の分野で取り入れられています。
認知症の高齢者を対象とした研究によって、その場に犬が登場することによって、犬を囲んだ認知症高齢者の会話が活発になったという嬉しい結果も報告されました。ペット共生型のグループホームが誕生したのも納得ができます。
増えつつあるペット可の老人ホーム
平成24年の4月に、ペットと一緒に暮らせる特別養護老人ホームが誕生しました。大事なペットを将来、保健所に送りたくないと考えている高齢者にとって嬉しいニュースです。大好きな犬や猫と一生別れることがなく、いつまでも仲良く一緒に生活できるのです。
またペットの世話は職員が行うので、身体が弱った高齢者でもまったく心配はありません。捨てられた犬や猫を引き取っている施設なので、殺処分の問題解決に関わり、同時にアニマルセラピーの効果も提供しているといえます。
近年、ペットを連れて入居できる老人ホームは、少しずつ増えつつあるのが現状です。飼い主とペットの老老問題の解決にもつながる良い流れだといえるでしょう。今後もこうした流れが続き、人間にとっても動物にとってもメリットがある癒しの空間がさらに増えることを期待したいところです。
ペットがいることで生じるデメリット
動物好きにとっては魅力いっぱいなペット可の老人ホームですが、デメリットが一切ないというわけではありません。動物嫌いな人や動物にアレルギーがある人からは、嫌がられる可能性もあります。また、他の人もペットを連れているということに対しての配慮も必要です。
人間同士は仲良くできても、ペット同士の相性の悪さからトラブルにつながることもあるので、十分に注意しましょう。
動物とのふれあいはレクリエーションの1つ
老人ホームによっては、レクリエーションの一環として動物とのふれあいを取り入れているところもあります。そうした施設では、さまざまなレクリエーションが行われる中で、リトミックやカラオケと並んで動物とのふれあいが人気になっています。
また、自然豊かな環境の中にあるグループホームで人気なのが牧場見学。普段はなかなか目にすることもない、珍しい動物にふれあえるということで人気になっています。四六時中ペットと一緒にいたいわけではないけど、たまには動物とふれあって癒されたいという人などは、このような施設も視野に入れると良いでしょう。
癒しのパワーで元気に長生き
いつまでも元気で暮らしたいと願う人が多い中、気になるのが健康寿命。家族の一員といわれるペットは、ときには家族以上の働きをしてくれます。ペット可の老人ホームは、動物の殺処分を減らせてアニマルセラピーも提供できるという一石二鳥の癒しの空間。
問題点の改善を図りながらそのような施設が増えることで、素晴らしい人生100年時代の到来が期待できそうです。
参照元(老人ホーム紹介) … 老人ホーム・介護施設探しならウチシルベ